聾者の対話:米中関係の今日

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シンガポールで行われたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で、米中が正面衝突のような対立ぶりを見せた。とりわけ問題となったのは南シナ海における中国の動向。アメリカは中国に対して、国際法を順守して、一方的な行動をやめるように訴え、一方中国はアメリカに対して、中国の主権を無視するような行動をやめろと訴えた。そのやりとりを見ていると、はた目にはまったくかみ合っていないように見える。

アメリカが国際法を持ち出して中国をけん制するのは、世界はアメリカのためにあるというゆるぎない前提があるからだろうし、中国が自国の主権にかかわる事柄への干渉はやめろといってアメリカを批判するのは、東アジアは中国のためにあるという前提があるからだろう。話がかみ合わないのは、ある意味当然のことのようにも思える。

こういう不毛なやり取りを、日本語では犬の喧嘩と言い、英語ではチキンレースと言うようだが、このたび英誌エコノミストがそれを「聾者の対話(Dialogue of the deaf)」と名づけた。どちらも相手の言うことを全く耳に入れず、自分の言いたいことだけを言いあっているという意味だ。

言い方が面白いなどと言ってほくそえんでいる場合ではないかもしれない。なにしろ米中関係は、地球の未来にとって非常に重要なファクターだ。その関係の当事者同士が、互いに相手を理解しようとせず、罵り合っているばかりでは、いつ戦争が起っても不思議ではない。それでは、中国人もアメリカ人も困るだろう。やはり相手を理解する努力が必要だ。月並みな言い方にはなるが。

(参考)Dialogue of the deaf As China and America continue to talk past each other, Asia frets : Economist 





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