ナヴァールラ人に逃げられて怒った悪鬼たちは、大いに騒ぎだす。逃げた者を追いかけようとして、瀝青のために羽を損なったり、仲間同士で喧嘩を始めるのである。その騒ぎの中で、ダンテとヴィルジリオは第六の嚢を目指して進んで行く。
かくとみし鬼いづれも咎を悔ゆるがなかに、わけて越度の本なりし者そのくゆることいと深ければ、すなはち身を動かして
汝は我手の中にありと叫べり、されど益なし、翼ははやきもなほ恐れに超ゆるあたはず、彼は沈み、此は胸を上にして飛べり
鴨忽ち潛り、既に近づける鷹の、怒りくづほれて空にかへるもこれにかはらじ
カルカブリーナは欺かれしを憤り、彼と格鬪はんため、却つてかの者の免かれんことをねがひ、飛びつゝ彼をあとより追ひゆき
汚吏の姿消ゆるとともに爪をその侶にむけ、濠の上にてこれを攫みぬ
されど彼また眞の青鷹なりければ、劣らず爪をこなたにうちこみ、二ながら煮ゆる澱の眞中に落ちたり
熱はたちまち爭鬪をとゞめぬ、されど彼等身を上ぐるをえざりき、其翼脂にまみれたればなり
殘りの部下と共に歎きつゝバルバリッチヤはその中四人の者にみな鐡鉤を持ちて對岸に飛ばしめぬ、かくていと速かに
かなたにてもこなたにても彼等はおのが立處に下り、既に黐にまみれて上層の中に燒かれし者等にその鐡搭をのべき
我等は彼等をこの縺の中に殘して去れり(地獄篇第二十二曲から、山川丙三郎訳)
絵は、瀝青のプールの上で仲間同士争う悪鬼たち。
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