蘇鉄図屏風:蕪村の世界

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(蘇鉄図屏風 紙本墨画 四曲一双 各162.0×363.0cm 左隻)

讃岐滞在中に蕪村が世話になった菅暮牛の菩提寺が丸亀にあった。正因山実相院妙法寺という天台宗の寺院である。その寺院のために蕪村は、一対の図屏風を製作した。画のテーマは、寺の庭園にあった蘇鉄である。完成したのは明和五年四月、蕪村が讃岐を去る直前のことである。

蘇鉄の表現には、黄檗僧鶴亭の影響があると指摘されているが、蕪村らしい自在な描き方もみてとれる。たとえば、蘇鉄の幹の一部を薄くすることで、幹同士の遠近感を表現するところなどである。

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(右隻)

これは画面の左側に大きな岩を配し、その右側に蘇鉄を描いている。左隻の図と並べると、中央に岩が、その左右に蘇鉄があるというふうに見える。

両方とも、襖に描かれていたものを、後に仕立て直している。襖の境界の部分が一部かすれているのはそのためである。どちらも、中央部の引手の部分が補修されているのが見える。

なお、蕪村は妙法寺のために、ほかに寒山拾得図と山水画二点を描いている。






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