四季山水図(春夏):蕪村の山水画

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(春景山水図 絹本彩色 105.5×41.0cm)

安永二年(1773、蕪村馬歯五十八)の四季山水図は、前々年の十宜図製作を経て、技量に一層磨きのかかった蕪村の中期の代表作である。いづれも、単に風景を淡彩で描くだけでなく、そこに人の生活ぶりを描き加えることによって、独特の世界を現出させている。こうした自然と人間の調和は、蕪村の絵画の最大の持ち味である。

春景山水図は、深山幽谷を描きながら、前景には渓流に臨んだ山荘を配し、花盛りの木を背にして人々が仕事にいそしむ様子を描く。全体に、俳画的な雰囲気が感じられるのは、十宜図の手法の延長であるせいか。

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(夏景山水図 絹本彩色 105.5×41.0cm)

夏景山水図も、人物の描き方が俳画的である。ただし、風景のほうはあっさりと描いている。木々の葉が大きく揺らいでいるのは、所謂青嵐をイメージしているのだろうか。空中には、カラスが二羽、風に煽られるように飛び交している。

渓流にせり出した台の上で寛ぐ人物、渓流に網を伸ばして魚を取ろうとする童子、いづれからものんびりとした雰囲気が伝わってくる。






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