フェルメールの女性たち

| コメント(0)
筆者の知人にフェルメールが好きな人がいて、フェルメールの作品を展示している美術館を求めて、世界中を飛び回っている。そんなことが可能なのは、フェルメールの作品数が少ないためもある。なにしろ今日まで残っている作品の数はわずか三十数点だ。美術館によっては数点の作品を保有しているところもあるし、都市単位にすれば精々十数都市に限られるので、その気になれば、そんなに時間をかけなくとも、満遍なく踏破することができる。

この人のように、フェルメール好きな人は多い。特に日本人には多いようだ。日本では、フェルメールの作品を展示すると、間違いなく大勢の人を動員することが出来る。数年前に、上野の美術館で「牛乳を注ぐ女」を展示したときには、筆者も見に行ったが、その際には、たった一枚のこの絵を見るために、すさまじい数の人が押しかけて、門前に長蛇の列ができたばかりか、館内に入った後も、満員電車の中のような人ごみにもまれて、とても美術作品を鑑賞するどころではなかった。

フェルメールの何が、かくも人をひきつけるのか。それを解明するには一冊の本でもまだ足りないだろう。

ここでは、フェルメールの作品のうちから、女性を描いたもの30点をとりあげて、主に技術上の視点から眺めてみたいと思う。これらの女性像は、いまいうところの肖像画とは異なって、女性をモチーフにした風俗画というふうに見られている。フェルメールの活躍した17世紀の後半のオランダでは、こうした風俗画が流行しており、フェルメールもそうした動きに従ったというのが、多くの美術史家に共通した見方だ。

こうした風俗画には、だいたい社会的な背景があって、それを解明することが、美術史家の腕の見せ所になっているのだが、ここでは、そうした歴史的・社会的な背景にはあまり立ち入らず、構図とか配色とかの、技術上のことがらを中心に鑑賞したいと思う。







コメントする

アーカイブ