
(秋景山水図 絹本彩色 105.5×41.0cm)
四季山水図シリーズのうち秋景。これは、深山幽谷を描いている点では春景と共通するが、人物の描き方が、俳画的ではなく、文人画的である。渓谷に船を浮かべ、自然の眺めを楽しむという構図に、文人画の精神を感じる。このように自然の風雅をとくに強調するときには、人物のほかに、人の生活を感じさせるものを省くのが文人画の常道である。
この絵のなかの渓流は、白く塗り残されており、水の流れを感じさせない。深山の麓も白く塗り残されて、こちらは霞のただようさまをあらわしている。

(冬景山水図 絹本彩色 105.5×41.0cm)
冬山のいかにも寒々として雰囲気をあらわしている。面白いのは、遠景、中景、前景それぞれに水を配しているところ。その水の前後に山があったり、堤のようなものがあったり、ゴツゴツとした岩が横たわっていたりする。船を遠景に配し、前景に人がいないのも面白いところだ。
手前の樹木の幹や枝、あるいは雪の部分の白いところは、地肌の白をそのまま生かしたもの。蕪村の入念な仕事ぶりが伺える。
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