新緑杜鵑図:蕪村の世界

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「新緑杜鵑図」は、「謝寅」の署名があるところから、晩年の作だとわかる。蕪村が「謝寅」号を用いたのは、安永七年(1778)馬歯六十三歳の年から天明三年に六十八歳で死ぬまでの五年間。この絵は、蕪村晩年の傑作群を飾る嚆矢となるものである。

絵のテーマは、幽邃たる自然を背景に、一羽の杜鵑が飛んでいるところである。杜鵑を飛ばすのはいかにも日本的な発想であるが、絵の構図には明の画の影響が指摘されている。深山幽谷の中を、高士を訪ねるというのがそれで、この絵には、人物の姿は描かれてはいないが。一本の道が高士の住む隠居を暗示している。

前景には竹林とその上の木々の新緑、遠景には霞かかった山々。この山のかすれたような描き方は、南宋画の描き方を取り入れたものと言われる。

はっきりとはしないが、竹林の下には小川が流れている。その一部は小さな滝となっているが、このようにわざと目立たぬように描いたには、どのような意図があるのか。(129.5×28.0cm 絹本彩色)

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これは杜鵑の飛んでいるところを拡大したもの。よくよく見ないと気づかぬが、この杜鵑は、こちらに少し腹を見せ、くちばしを開いて、甲高い声で叫んでいるように見える。






コメント(2)

壺斎様
このほととぎすは鋭い鳴き声を発し、山間の新緑の谷に響き渡ったのだろうか?
ほととぎす 平安城を筋違(すじちかひ)に  蕪村
の句を想起しましたが、この絵の品格のほうが優っていると思いました。
2016/7/10 服部

壺斎様
この絵をみてコメントを書いてから、なにか気になっていた。蕪村がこの絵で表現したかったことは、多分ホトトギスの鳴き声に和して、山、木々、森、谷、たなびく霞、空気までもが、喜びを奏でている、自然への賛歌であるのではないかとあらためて感じました。
2016/7/10 服部

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