三人の亡者のうちの一人に、六本脚の蛇が巻き付き、その体を締め付けるうちに、亡者と蛇とは一体化して、まるでひとつの生き物のような観を呈する。それを見た他の二人の亡者は、驚愕の叫び声を上げる。彼らの発する言葉によって、蛇に締め上げられた亡者はブルネレスキだとわかる。(アーニエルはブルネレスキのこと)
我彼等にむかひて眉をあげゐたるに、六の足ある一匹の蛇そのひとりの前に飛びゆきてひたと之にからみたり
中足をもて腹を卷き前足をもて腕をとらへ、またかなたこなたの頬を噛み
後足を股に張り、尾をその間より後方におくり、ひきあげて腰のあたりに延べぬ
木に絡む蔦といへどもかの者の身に纏はれる恐ろしき獸のさまにくらぶれば何ぞ及ばん
かくて彼等は熱をうけし蝋のごとく着きてその色を交へ、彼も此も今は始めのものにあらず
さながら黯みてしかも黒ならぬ色の炎にさきだちて紙をつたはり、白は消えうするごとくなりき
殘りの二者之を見て齊しくさけびて、あゝアーニエルよ、かくも變るか、見よ汝ははや二つにも一にもあらずといふ(地獄篇第二十五曲から 山川丙三郎訳)
絵は、蛇に巻き付かれたブルネレスキを囲んで、その右手には驚愕する二人の亡者を、左手にはダンテとヴィルジリオを描く。ブルネレスキは頭を蛇に飲みこまれようとしている。
コメントする