富嶽列松図:蕪村の世界

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「富嶽列松図」は、延々と連なる松の林の背後に浮かび上がった富士の勇壮な姿を描いたもの。横に細長い画面を生かして、松林の長く連なるさまと、それに富士が覆いかぶさるように聳える様子が心憎く演出されている。富士が中心より右側に描かれている為、鑑賞者の視線は右から左へ動くように導かれ、その視線の先の左端の画面がわざとぼやけているのは、時雨を表現したのだと解釈される。

松も富士も極度に単純化されている。富士は白一色で表現され、松は幹の部分を太い線で描き、一見無造作な線を重ねることで松の葉の茂みを表現している。また、松の幹の部分に代赭をうすく伸ばすことで、色彩感を演出している。蕪村は代赭でおだやかな暖色を表現するのが好きだったようだ。

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これは、左端に近い部分を拡大したもの。左端の部分は、一旦色を塗った後で、絵の具が乾かぬうちに拭い取ったか、あるいは乾いた後で濡れた筆で脱色させたか、いづれかの方法を用いたのであろう。

左上に蕪村と署名しているのは、この絵が俳画感覚で描かれたことを物語っているのではないか。(29.6×138.0cm 紙本墨画淡彩)






コメント(1)

壺斎様
 富士山を描いた画家は多くいる。富士山全体を真っ白に描いた画家を私は見ていない。蕪村ならではの斬新な発想だ。美しい白の富士山である。
 離れたところで時雨ている。昔の東海道には松が多かったのだろうか。
 2016/7/23 服部

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