トランピズム:アメリカン極右にGOPが危機感

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米共和党(GOP)は、ドナルド・トランプを大統領候補に選んだものの、ここにきて彼を大統領にしないことを目的に団結する動きが強まってきた。トランプの主張は、共和党が掲げる保守主義の理念からあまりにも逸脱しているばかりか、共和党のエスタブリッシュメントにとっては危険思想である、という認識が次第に強く共有されるようになったことが背景にある。

トランプの主張は、次の三点に要約される。経済ナショナリズム、移民制限のための国境管理、アメリカ・ファーストと称されるアメリカの利害中心主義だ。

これらはいずれもグローバライゼーションの動きとか自由主義の理念に反している。ところがGOPは、そうした理念に自分たちの存在意義と政治目標を見出してきた。トランプはそれを正面から踏みにじろうとしている。これはとんでもないことだ。このままトランプを大統領にさせたら、共和党の理念が重大な挑戦を受ける、そういう危機感が、GOPのエスタブリッシュメントをストップ・ザ・トランプに向けて動かしているのだと思う。

トランプの主張は、急に出てきたものではない。こうした考えは共和党の最右翼思想として、これまでも一定の影響力を持ってきた。だが、共和党は、ティー・パーティの路線までは鷹揚でいられたが、トランピズムには我慢ができない。トランピズムは、アメリカの孤立主義と人種差別(白人至上主義)を煽り立てることで、アメリカの将来を大きく損なう恐れが強い。

アメリカの将来は、アメリカのエスタブリッシュメントにとっての将来と言い替えてもよい。それはグローバライゼーションと非白人労働力の確保に依存している。それに真っ向から反対するトランプには、アメリカの将来を任せるわけには行かない。そうGOPのエスタブリッシュメントが気付き始めたからこそ、トランプを引きずりおろそうと、始めたわけであろう。

トランピズムの思想的な系譜と、それがGOPにとって持つ意味について、英紙ガーディアンが長文の論考を載せている(The dark history of Donald Trump's rightwing revolt By Timothy Shenk : Guardian)。これを読むと、アメリカの保守主義の最近の動向について、輪郭をつかむことができる。一読をお勧めする。





コメント(1)

壺斎様
<アメリカの将来は、アメリカのエスタブリッシュメントにとっての将来と言い替えてもよい。それはグローバライゼーションと非白人労働力の確保に依存している。それに真っ向から反対するトランプには、アメリカの将来を任せるわけには行かない。>
 1%の富裕層が下位90%の富を上回るアメリカの格差社会に対し、貧困層の不満がふきだしたのがトランプ現象の最大の原因だと思う。エスタブリッシュメントはそのことをよく知っているのではないだろうか。表立って大きく反対すれば、大衆が自分たち富裕層にむかってくる。ウオール街を占拠される恐れがある。9%のなかの良識ある中間層もトランプのいうことがいかに馬鹿げているかを知っている。
 グロバリゼーションと資本主義がアメリカにとって大切な政策だと教えられてきたが、経済の指標が改善され、発展していくのに貧困層は貧しく、富裕層はますます富み、格差が広がっていく。おかしい、おかしいと思っている。これを解決する政治家はいない、不満といらだちはこのような候補を熱狂的に祭りあげた。トランプが大統領になれば、間違いなく混乱が起こり、経済は停滞するだろうことは誰もが容易に予想できること、これにつけこんで、エスタブリッシュメントは目立たないようにトランプ下ろしを始めている。
 私はこのように認識している。資本主義を続けていくには、格差是正に真剣に取り組まねば、いつかは貧困層からの反乱がおこるだろう。
 2016/8/19 服部

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