芝公園の高層ホテルで和食を食う

| コメント(1)
芝公園の高層ホテルにある食堂で和食を食った。といっても空中の高いところからあたりを睥睨しながら、というわけではない。地下にある一和風料理屋で懐石風のコース料理を食った次第だ。だから高層ホテルと言っても、別に高層の雰囲気を楽しんだわけではない。地下の穴倉のようなところで、壁を見ながら出された料理を食い、同席の諸子と罪のない話に打ち興じたというわけだ。同席したのは、山子夫妻と松子。落子は家内に事情があるといって参加しなかった。

ここ(ホテル)は始めて来るけど、昔からあったかね、と山子がいうので、いや建ってからまだ十年ぐらいしか経っていない。その前はゴルフの練習場だったと思う。ここは芝公園として都市計画決定されているはずだから、本来こんな高い建物は建たないはずなのだが、どういうわけか、建ってしまったんだね、と筆者が解説する。

今日はH子(筆者のこと)の嗜好を尊重して純和風のコースを頼んでみました、と松子が言う。僕自身はビーフが好きなんだけど、H子はあまり好きではないというので、自分の嗜好を抑えて肉無しにしました、といかにも残念そうな口調で言うので、そんなに抑えなくともよかったのに、小生は肉はたしかに好物ではないが、出されるものは何でも食うのが主義だから、ビーフを出されても文句は言わないよ、と言ってやったところ、松子はいかにも失敗したという顔つきをした。

リオのオリンピックが終わったばかりとあって、自然と話題がオリンピックのことに及ぶ。今回は柔道やレスリングで大変な成果を挙げたが、やはり指導者がよかったんだろう。特に柔道は、以前の指導者とは全く異なる指導をしたと評判だ。そのおかげで選手がのびのびと活躍できたことが、今回の結果につながったんじゃないかな。また、陸上の四百メートル・リレーなんか、これまでは絶対にありないと思っていたことがおきたわけだから、これは特筆すべきことと言ってよい。日本人のスポーツもワールド・スタンダードに伍するようになったわけだ、と言いながらみな満足そうな顔つきである。

ところで閉会式での安倍総理のパフォーマンスには笑ってしまったね。あれは、所謂「頭の大いにおかしな某元総理大臣」が演出したそうだが、「頭が大いにおかしい人」の演出にしてはなかなか決まっていたじゃないか。安倍総理の表情も、いたずら小僧が自慢しているようで、結構愛嬌があったよ。おかげで世界中の皆さんに笑って貰ったんじゃないか。まあ、こんな男が総理大臣をやっている国というのは、無害で御しやすいと思われたんじゃないかな。

それに比べると小池都知事は冴えなかったね。着物の着こなしが悪いせいで、実像以上にデブに見えた。ズングリムックリと膨れあがって、あれではまるで芋虫だよ。やり手婆さんでももっと粋な着こなしをする、と誰かが言っていた。恐らく今まで着たことのないものを着て、勝手がわからなかったんだろうが、それにしてもひどすぎたね、とみな同情とも罵倒ともつかない見立てをする。

話題はオリンピックに続いて経済のことに移る。山子も松子も大学院で経済学を専攻したこともあって、経済を論ずるのが好きなのだ。その場合の視点と言うのが、我々三人ではそれぞれ違う。山子は資本主義は永遠に続くし、また続くべきだと考えているらしいのに対して、筆者は資本主義には終わりがあると考えている。松子はその中間らしい。そんなバラバラに違った立場からそれぞれ経済を論じるので、話がほとんどかみ合わない。それはいつものことなのだが、みな経済を云々すること自体が楽しいので、相手の反論などどこ吹く風、自分の言いたいことを言いたい放題に言いあう、という仕儀になる。

そんなわけだから、松子がこのメンバーで経済研究会みたいなものをやろうじゃないかと提案したときには、筆者は疑問を呈した次第だ。共同研究というのは、基本的な前提をある程度共有していることが必要だ。前提がそれぞれバラバラに違っていては、議論は生産的なものにはならない。みなてんでに持論を主張しあって、それで終わりということになりかねない。我々三人の場合には、経済事象を見る場合の視点が、それぞれ大分違っているので、議論は屹度かみ合わないだろう。

ところでそろそろ温泉にでもつかりたい気分だね、と松子が言う。ああ、小生は来月熟女たちと一緒に奥日光の温泉につかりに行くよ、そう筆者が答えると、熟女たちとは随分仲がいいようだが、どうしてそんなに仲がよくなれるのかね、と山子が質問する。そう問われても答えに窮するが、要するに気が合うのさ。年も同じだし、互いに互いが気に入っている。やはり異性の友達を持つのはいいことだ。脳の活性化にもつながるし、第一同性とは違う発想を聞くことが出来る。そこがまた楽しいのさ。小生はたまに昔の職場の連中と飲み会をやろうという話になるが、その際にはなるべく男を締め出して、女性たちだけと飲むように心がけているところだ。そう答えたところが、僕は熟女は女房一人で沢山だ、と松子がため息混じりに言う。

こんな具合に、今宵も話の尽きることはなかったが、夜も更けゆくばかりなので、適当に時刻を見計らって解散した。帰りはホテルの前から山子夫妻とともにタクシーに乗り込み、新橋の駅まで運んでもらった。タクシー料金(丁度1000円)は山子の細君の好意に甘えた。





コメント(1)

壺斎様
 どんな議論を行うのでも前提条件の認識がなければかみ合いません。まして経済情勢を語る場合、現状の認識が一番重要になるかと思います。仮に、経済の考え方が同じようであっても・・
 2016/8/26 服部

コメントする

最近のコメント

アーカイブ