「銭塘観潮図屏風」は杭州の郊外を流れる川銭塘江の海嘯というものを描いたものである。海嘯とは、満潮時に川の水が逆流し、それが巨大な波となって押し寄せる現象で、すさまじい音を伴うことから、海嘯と呼ばれる。池大雅が描いたのは、秋の海嘯で、中秋の満潮にともなう珍しい現象を、人々が眺めている様子を描いている。
画面の左半分に川岸の崖を配し、右半分の広大な面に川水の逆流する海嘯の様子を描いている。川の水面には横線で波が描かれ、海嘯を表現しているように見えるが、海嘯のもつダイナミックな躍動感は、余り伝わってこないようである。むしろ西湖の静かな水面を思わせる。(165.5×371.0cm 六曲一双 紙本淡彩)
これは、左側の部分を拡大したもの。崖の傍らの堤に三人の人物が立って、海嘯の様子を見下ろしている。そこからは、どちらかというと、海嘯の切迫感よりも、のどかな雰囲気が伝わってくる。
崖や樹木の描き方は、微細な点にまで気配りがきいた、精密なものである。
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