広島カープの25年ぶりの優勝試合を見る

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近年の筆者には野球の試合を見る習慣はなく、ましてや特定の野球チームのファンでもないのだが、昨夜(9月10日)はテレビの野球中継を見てしまった。広島カープ対読売ジャイアンツの試合で、カープはこの試合で勝てばリーグ優勝することになっていた。そして試合に勝って見事にリーグ優勝したのだった。実に25年ぶりの快挙だった。

筆者が何故こんな試合を見る気になったか。それは今年の広島カープに特別なオーラのようなものを感じたからかもしれない。そのオーラの一端を筆者は今年の6月に尾道方面に旅行したときに感じた。尾道駅前のラーメン屋に入って尾道ラーメンを食った時だった。その店には次々と客が入ってきたのだが、それらの客が例外なくテレビ画面に釘付けされたように見入った。テレビ画面ではカープの試合が放送されていた。その試合をどの客も熱心に見入っている。客だけではない、店の従業員も見入っている。みな特別の感情をあらわしているわけではなく、ただ一心不乱に画面に見入っているのである。

試合を見るのに熱心で客の注文に応えるのがおろそかになっても誰も文句は言わない。この際ラーメンよりもカープの試合のほうが大事だ、そんな雰囲気が客からも従業員からも伝わってくる。それを傍で見ていた筆者は、ここ尾道が広島県内であり、その広島県に住んでいる人間がカープを応援するのはある種あたりまえのことだとは思ったのだが、それにしてもこの熱気は何だ。そんな思いに捉われたのを思い出す。

そんな熱気に支えられてか今年の広島は強かった。その強さを支えたのは二人のベテラン、黒田と新井である。特に黒田は広島に骨を埋める覚悟で日本に戻ってきた。その黒田の男意気が広島ファン以外の人にも伝わり、今年の広島はオールジャパンの声援を受けた。人間というものは、というより日本人というものはといったほうがいいのかもしれぬが、心意気に弱いものだ。筆者にもそんなところがあったかと、昨夜の試合を見ながら感じた次第だ。

昨夜も黒田と新井が活躍した。それに若い連中が促されてチーム一体となって戦うイメージが伝わってきた。特に印象的だったのは、黒田も新井も常に表情に緊張をたたえていたことだ。笑ったりしないのは無論、自分が試合をリードしているのだという張り詰めた雰囲気を全身で表していた。それに若い連中が反応して、チーム全体が引き締まって見えた。今年の広島が強いのは、ベテランと若手が一体となって同じ目標を追い求める姿勢にあった、と感じさせられたところだ。

優勝が決まった一瞬、ピッチャーズマウンドに集まった団員たちの中に、涙を流しながら抱き合う黒田と新井の姿があった。こういう場面で男の涙を見せられるのは悪いことではない。





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