ノーブラはフランスの良き伝統か?

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フランスの多くの自治体で、イスラム教徒の女性にイスラム風の服装をやめさせる動きが広がる中、海辺のリゾート地では、イスラム風水着ブルキニの着用を禁止する動きが世界中の注目を浴びた。これについては、フランスの法廷もやり過ぎだとの判断を示したほどだが、内務大臣のヴァルスはそう思っていないようで、ブルキニ着用の禁止を続けるべきだと鼻息が荒い。ただ、国務大臣という要職についている手前、むやみやたらとブルキニ禁止を叫ぶわけにもいかないと思ったか、ブルキニがいかにフランスのよき伝統と反しているかについて強調した。


ヴァルスが言うには、フランス革命のシンボルであるあのマリアンヌが胸を露出した姿で表象されているように、フランス人にとって女性のノーブラは、自由と平等と博愛主義の象徴であり続けてきた。こうしたフランスの伝統を踏まえれば、女性の乳房どころか全身の肌を隠そうとするブルキニは、フランスの良き伝統である自由、平等、博愛に反して、抑圧と忍従の象徴である、そうヴァルスは言いたいようだ。

ヴァルスのこの主張に対しては、様々な反論が出されたが、もっとも強烈だったのは、ヴァルスがフランスの歴史をちゃんと勉強していないというものだった。マリアンヌはたしかにフランス革命以来のフランスのシンボルであり続けてきたが、彼女は必ずしもノーブラで表象されてきたわけではない。ニューヨークにある例の自由の女神像はマリアンヌをかたどったものだが、これも胸を露出させてはいない。ヴァルスはマリアンヌをドラクロアの有名な絵にあるあの女性と混同しているのだろう。そうでなければ、こんなバカなことをいうわけはない、そういってヴァルスの不勉強ぶりをなじる意見が多くのフランス人の同意を得たということだ。

こういう光景を余所ながら見せられると、フランス人は、なんだかんだいっても大した連中だと思う。





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