フィリピンのドゥテルテ大統領は、先日オバマ大統領を a son of a whore と言って罵ったが、すぐさまそれを撤回すると表明した。ドゥテルテのこの発言にさすがのオバマも腹をたて、ビエンチャンのASEANの席で予定されていた米比首脳会談をキャンセルする騒ぎになったために、アメリカとの関係悪化を恐れて撤回した模様だ。
といっても、ドゥテルテは自分のこの発言を心から後悔しているわけでもなさそうだ。麻薬犯罪者を裁判なしで殺害するという方針について、欧米諸国からの厳しい批判を浴びたことに対しては腹を立てたままだ。彼は在比米大使を a gay son of a whore と罵り、ローマ教会に対しては don't fuck with me と罵ったが、そちらの発言は撤回していない。
ドゥテルテが大統領に就任して以来いままでの間に、すでに2400人の麻薬犯罪容疑者を裁判なしで殺害した。殺害の主体は警察や民兵だ。日本と違いフィリピンには民兵組織というものがあって、それが治安維持に重要な役割を果たしているらしい。
こうした民兵に向かってドゥテルテは、10万人もいると言われる麻薬犯罪者や麻薬常習者たちを、見つけ次第殺せと呼びかけている。
壺斎様
ドゥテルテ大統領の<麻薬犯罪者を裁判なしで殺害する>という方針を批判する米国は、フィリピンに対し経済援助、軍事援助にも影響を与えるという恫喝まがいの脅しをしたのではないだろうか。南シナ海のことを考えれば米国の言うことを聞け、といったのではなかろうか。
米国が大々的に経済援助なり、軍事援助を行えば、<麻薬犯罪容疑者を裁判なしで殺害する>ことを容認することになり、米国の人権外交が日和見的と非難されることを恐れたにちがいない。ドゥテルテ大統領はオバマ大統領に対する侮蔑的発言を撤回した。
さてどうなるのだろうか?。
すぐさま日本は大型巡視船の供与を発表した。中国はフィリピンへ歩み寄ろうとしている。虚々実々の駆け引きが行われている。
ドゥテルテ大統領は中国との関係で刺激的な表現は極力避けている。フィリピン経済に深く入り込んでいる中国を懸念してのことか、経済援助をさせようとしているのか、したたかな人物であるようだ。
世界に広がる麻薬犯罪の有効なモデルを提供することになるのだろうか、独裁者としてフィリピンに君臨するのであろうか。今後国際世論は、彼をどう評価するのだろうか。
2016/9/7 服部