
「倣王摩詰漁楽図」は、画題の通り王摩詰の漁楽図を手本にした絵である。王摩詰とは盛唐の大詩人王維のこと。王維は画家としても有名だった。漁楽図とは、老荘思想が理想とする脱俗の境地を描いたもので、古来画題として好んで取り上げられてきた。池大雅もそれに倣ったと自ら言っているわけだが、ここには彼独自の境地がある。
遠景の深山から流れ出た水が渓谷をうがちながら画面手前の方まで流れてくる。渓流沿いには小さな家が点在していたり、人々が渓流の傍らで行楽するさまが描かれている。
短い筆のタッチと点描を重ね合わせながら画面を構成する。白描という画法だ。点描を多用した大雅としては、もっとも完成度が高いと言える。(149.2×53.8cm 紙本墨画)

これは上部を拡大したもの。点描のきめの細かさがよくわかる。人物の輪郭は細い線で、なにげない感じに描かれている。
壺斎様
点描で描かれたこの絵の良さが分からない。西洋の印象派の画家スーラーの点描は光の概念を追求した結果取り入れられた画法である。
南画でこの点描は成功していると言えるのだろうか、私にはよくわからない。
2016/9/9 服部