洞庭赤壁図巻:池大雅の世界

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「洞庭赤壁図巻」は、日本の文人画が到達した記念碑的な作品だとの評価が高い。国宝にもなっている。大雅生前から文人仲間の話題となり、多くの文人たちがかかわりをもった。すなわち、韓天寿が題簽(九霞山樵法唐人之筆洞庭赤壁図)を、宮崎筠圃が題字(乾坤日夜浮)を、細合半斎と頼春水が跋文を、木村兼霞堂が箱書(池貸成洞庭赤壁図)を、それぞれ寄せており、この作品が文人仲間のシンボル的なものだということを表明している。

モチーフは、明の画家楊聖魯の原画に倣ったといい、また聖魯による原賛全文を書写してもいる。その末に記された款記により、明和八年(1771)、大雅馬歯四十九の年の作だとわかる。この年大雅は十便図をも作成している。

縦55センチ、横300センチの大画面に、洞庭湖周辺及び赤壁を描いている。この二つの場所は地理的にはかなり離れているはずだが、絵の中では、同じ空間の中に収まっている。すなわち手前には洞庭の湖面が、右半分には赤壁の絶壁が描かれている。

色彩は鮮やかである。朱、緑青、群青など華やかな色彩で描き、それに金泥のくくりを施している。構図は複雑で、フォルムは入念に描かれている。(57.0×298.4cm 絹本着色)

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これは、洞庭湖の雄大な景色の部分を拡大したもの。水面に立つ波が丁寧に描かれている。大雅は琵琶湖に足を運んで、湖面に立つ波の様子を熱心に観察したそうである。モチーフは中国の風景だが、水面は日本を反映しているということになる。






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