黄金の便座

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写真(New Yorker から)は18金で作られた便座。人の意表を突く前衛的な作品で知られるマウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan)が制作して、グッゲンハイム美術館のトイレに設置した。美術館に置かれているからと言って、実用とは無縁の飾り物ではない。実際の用途を前提にした立派な便器だ。

マルセル・デュシャンが男性用の小便器を美術展に出品して世間をあっと驚かせたのは1917年のことだ(実際には観客の目には触れなかったが)。その際、その小便器は他の美術作品とは別に展示会場の一角に放置された。だからといってそれで用を足すわけにもいかなかった。純粋に眺めるためだけのものとして作られていたからである。それから一世紀近くたって美術館に現れたこの便器は、人が実際に使用できる。

美術館ではその具合を調べるために、カテランの了解を得て、タイの現代アーティストであるリクリット・ティラワニ(Rirkrit Tiravanija)に使ってもらったそうだ。用を足して出てきたエィラワニにカテランがどうだった、と聞くと、よかったよ、と答えたそうだ。なにも特別な形をしているわけでもないしね、とティラワニが言うと、カテランも、二百ドルのランチを食おうが、二ドルのホットドッグを食おうか、出て来るものに大した違いはないからな、と応じたそうだ。

この便器は今後も希望者に使ってもらう方針だという。ただ物が物だけに、ほったらかしにしているわけにはいかず、常に警備員を配置しなければならない。その維持には多額の金がかかるという。美術館では、ブルガリの雑巾とシャネルのパウダーでクリーニングする方針らしい。





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