アメリカの北朝鮮空爆

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読売(9月18日発ウェブサイト記事)によれば、アメリカ政府の政策決定に強い影響力を持つ政策研究機関「外交問題評議会」が、オバマ後の新政権を対象に、北朝鮮への空爆を勧める呼びかけを行ったそうだ。北朝鮮が核兵器の小型化と弾道ミサイルの技術を向上させていることへの強い危機感が反映されているとのことだ。もしもアメリカの新政権がこの提言通り北朝鮮の空爆に踏み切れば、東アジア情勢は一気に液状化するだろう。

一度の空爆で北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルが完膚なきまでに破壊され、北朝鮮の軍事的脅威が一気に解消されるのであれば、こうした政策も検討に値するかもしれない。しかしそんなことが可能だとは、誰も保証できないというのが現実ではないか。そういう場合に際して日本国民として頭に入れておかねばならぬのは、そんなことをしたり、あるいは仄めかしたりしただけでも、北朝鮮に軍事的な反撃の根拠を与えるということだ。

反撃は当面北朝鮮の空爆を担う米軍基地が目標になるだろう。その米軍基地は、韓国と日本にある。特に沖縄の米軍基地が空爆の最前線になるのは、これまでのアメリカ軍の戦略から類推して蓋然性が高い。となれば沖縄が北朝鮮による反撃の対象となる可能性は非常に高いということであり、場合によっては沖縄県民が米朝戦争に巻き込まれたあげくに、自分たちの土地が戦場となることだって考えられないことではない。

日本政府はいまのところ、こうした提言に対して一切反応していないが、アメリカの政権が空爆方針を固めてから反応しては遅すぎる。やはり、こうした動きが出てきた時点で素早く反応し、それが日本の安全保障にどのような影響を及ぼすのか熟慮しておく必要があるだろう。

北朝鮮の金正恩政権がアメリカや日本の安全保障にとって大きな脅威となっているのは確かなことだ。だからといって、やみくもに空爆して相手を困らせればよいというものでもない。北朝鮮を無害化するには、もっとモダレートな方法だってあるだろう。たとえば金正恩を標的にした高度なインテリジャンス組織を確立し、秘かに彼を暗殺するなども考えられる。派手に空爆するよりこちらの方がずっとスマートだし、攻撃を仕掛ける側の痛手も少なくてすむのではないか。

北朝鮮がいくら無法者の集まりだからと言って、一切外交努力をしようとせずに、ただ力任せに相手をねじ伏せようというのは、いかがかと思う。





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