テレサ・メイの国家主義的傾向

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EU離脱問題の混乱がきっかけでキャメロンの後継者に収まったテレサ・メイ(写真、Economist から)だが、その政治的スタンスはいまひとつ明確ではなかった。その彼女が10月5日の保守党大会で、自分の政治スタンスを明らかにした。それは一言で言うと国家中心主義ともいえるようなものだ。

メイは、今回のEU離脱問題で示された国民大多数の意思は、強い国家を求めるというものだ、と言う。国民は、移民の流入にうんざりし、自分勝手なエリートたちに腹をたて、自由放任的な経済に怒っている。これらの問題に対して国家が介入し、強いイギリスを回復したうえで、国民の雇用の拡大など、いわばイギリス・ファーストの政策を実現して行かなくてはならない、そう考えている。だから今回の国民の選択は、新たなイギリスの創造を目指す革命だ、そうメイは言って、自分がその「革命」の遂行者となる決意を示した。

これまでのイギリス政治の対抗軸は、左翼が国家介入による社会問題の解決に重点を置き、右翼が自由放任の経済に重点を置いてきたが、メイは右翼でありながら左翼的な政策にかじを取る決意を示したわけだ。とはいっても自分を左翼だとは口が裂けても言わない。自分は従来の右翼よりもセンター寄りに梶をとると言う。

たしかに経済政策だけ取り上げれば、国家の介入を重視する点で左翼的だとは言えようが、その国家の介入が経済分野に限られず、社会生活のあらゆる分野に及ぶとあっては、国権主義というべきだろう。国権主義は、日本では極右のトレードマークになっているが、メイの今回の発言もそれを思わせるものがある。

なにしろ今回メイの最も強く主張した政策とは、国境管理の強化、外国人労働者の排除、秩序と規律の重視、国家への帰属感の強調、といったもので、例のトランプの主張とかなり重なり合うところがある。トランプがアメリカ・ファーストと言って主張していることがらを、メイはイギリスの新たな革命を旗印にして主張しているわけだ。





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