不忍池畔雨中、池の端弁天:小林清親の東京名所図

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(不忍池畔雨中)

不忍池は、谷中方面から流れてきた藍染川の水を溜めたものである。かつては、その水が隅田川に流れ出し、池の水は年中入れ替わっていた。だから水質もよかったわけだ。

この図柄は、池の南岸から弁天堂方面を眺め渡したところ。池の水面には蓮の葉が浮かんでいる。この蓮は、徳川時代から今日まで、枯れることなく延々と生き続けて来たのであろう。

なお、この池は、上野の山を比叡山に見立て、その麓に広がる琵琶湖をイメージしたものだ。琵琶湖は比叡山の東側にあるが、この池が上野の山の西側に位置するのは、地形のせいで致し方のないことと、大目に見てもらいたい。琵琶湖を擬してあるから、弁天堂のある島が竹生島のコピーであることは言うまでもなかろう。

傘をさした女の後ろからコモをかぶった子供がついてゆく。いかにも清親らしい人物配置だ。

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(池の端弁天)

画面右手奥に見えるのが弁天堂、その右手の森は上野の山。手前の堤のような道は、弁天堂から南西方向に伸びる堤だろう。とするとこの絵は、池の西側から弁天堂を眺めたものだと思える。

堤の上を歩く二人の人物が傘をさしているところから、雨が降っていると思える。しかもかなり激しい降り方らしいことは、傘をすぼめる仕草から伝わってくる。弁天堂の屋根や手前の柳の幹が白いのは、雪が積もっているからだろう。






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