ノーベル賞は風に吹かれて

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イラスト(JapanTimesから)は、ノーベル文学賞の受賞を伝えられたボブ・ディランをイメージしたもの。受賞の気持ちはどうだい、と聞かれて、「その答えは風に吹かれて・・・どうでもいいじゃんか」と言っているディランが、コミカルに描かれている。しかし実際にコミカルなのはディランではなく、ディランにノーベル賞を付与したアカデミー組織であるようだ。

ノーベル賞のアカデミー組織にも官僚制があるそうだ。その官僚制のトップが、ノーベル賞の受賞についてだんまりを決め込んでいるディランに腹をたて、ディランは傲慢な奴だと叫んだ、と伝えられた。ノーベル・アカデミーとしては、自分たち官僚組織のよって立つ基盤であるノーベル賞の権威を、一介の吟遊詩人にコケにされたと思ったのだろう。その気持ちには無理がない。

ノーベル賞が受賞を拒否された例はいままでにもある。アインシュタインが1921年に受賞を拒否した時には、死の商人であるノーベルが作った賞など受け取れないと言った。サルトルが1964年にノーベル賞を拒否した時には、文学は個人的な営みであって、それはファンダメンタルズと妥協すべきではない、という理由をあげた。だが、これらは非常に例外的なことで、ノーベル賞というのは、無条件にすばらしいものだから、それを辞退するなどとは正気な人間のすることではない、そういう思いをノーベル・アカデミーは共有しているようだ。でなければディランをこんなに烈しく罵ることはないだろう。

上のイラストをつけたJapan Times の記事は、ディランの吟遊試人としての素晴らしさをもっぱら強調しており、ディランの今回の行動の是非については言及していない。





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