
恒星天の双子宮でダンテらの前に現れた炎のうち、聖ペテロの霊を収めた炎が彼らに近づき、ダンテが果たしてベアトリーチェの願うように、霊たちの喜びにあずかる資格があるかどうか吟味する。吟味の基準は、ダンテがキリスト者としての相応しい信仰を有しているかということだった。
さていと美しと我に見えし球の中より一の火出づ、こはいと福なる火にて、かしこに殘れる者一としてこれより燦なるはなかりき
この火歌ひつゝベアトリーチェの周邊をめぐること三度たび、その歌いと聖なりければ我今心に浮べんとすれども効なし
是故にわが筆跳越りこえてこれを録さじ、われらの想像は、况して言葉は、かゝる襞にとりて色明るきに過ればなり
あゝかくうやうやしくわれらに請ふわが聖なる姉妹よ、汝の燃ゆる愛によりて汝は我をかの美しき球より解けり。
かの福なる火は、止まりて後、息をわが淑女に向けつゝ、わがいへるごとく語れるなりき
この時淑女。あゝわれらの主がこの奇しき悦びの鑰(下界に主の齎もたらし給ひし)を委ね給へる丈夫の永遠の光よ
嘗て汝に海の上を歩ましめし信仰に就き、輕き重き種々さまざまの事をもて、汝の好むごとく彼を試みよ
彼善く愛し善く望みかつ信ずるや否や、汝これを知る、そは汝目を萬物のものの描かれて視ゆるところにとむればなり
されどこの王國が民を得たるは眞の信仰によるがゆゑに、これに榮光あらしめんため、これの事を語る機をりの彼に來るを宜むべとす(天堂編第二十四曲から、山川丙三郎訳)
絵は、ダンテとベアトリーチェの前に現れた聖ペテロの霊の炎。聖ペテロに向かってベアトリーチェが語りかけている。
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