四季山水図(夏):雪舟の水墨画

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四季山水図四幅のうち夏図は、李在の山水図(東京博物館蔵)に非常に似ているので、よく比較される。まづ構図だが、画面全体に景物をくまなく配した構図が、両者に共通している。描法も、遠くの山をぼかすことで遠近感を出したり、山の麓に白い霞を介在させることで上下の高低感を表したりするところが共通している。

しかし、李在の場合には、全体的にごちゃごちゃした印象が強く、遠方の山などは上部が画面から突き出そうになったりと、やや調和に欠ける印象を受ける。それに比べると雪舟の絵は、山の周囲に空間を持たせ、前面の光景も李在よりずっとすっきりと描いていることで、ややゆったりした印象を与える。

また、李在の場合には、背景の山と前景の自然との間に、あまり遠近感がない。これは画家の視点がモチーフより遠い為に、遠近感がぼやけたことの効果と見える。言ってみれば、遠方の景色を望遠レンズで見ているような感じを抱かせるわけだ。

雪舟の絵では、遠方の山と前景の自然とのあいだに明確な遠近感がある。それは、山を比較的うすく描き、前方の自然には明暗のメリハリをつけた効果だ。遠方の山についても、背後の山をいっそう薄く塗ることで、山同士の間に遠近感を演出している。

こうした相違は、雪舟が若いころから学んだ日本の水墨画の伝統のもたらしたところと言えよう。

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これは、上部の部分を拡大したもの。山の頂上に樹木を並べ、また寺院の塔のようなものを描いているのは、明らかに李在の影響である。(絹本着色 149・2×75.4cm 東京国立博物館蔵)

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(李在 山水図)






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