栄光の天の女王:ブレイクの「神曲」への挿絵

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ブレイクの「神曲」への挿絵の最後を飾るものは、「栄光の天の女王」と題された一枚である。この絵は、天国編の第三十二曲の内容に対応している。本文ではこの部分は、薔薇の花びらに包まれるようにして、大勢の天使や使徒たちの居並んでいる姿が見え、その中心に聖母マリアが座しているということになっている。ダンテはその様子を、自分の再解釈を交えながら描いた。

本文では、続いてダンテが聖マリアに祈りを捧げ、その後、一点に凝縮した光を見たことになっている。その光は、神と子と精霊が一体となったもので、カトリック信仰の真髄をイメージ化したものだ。

かくて神の栄光をたたえながら、神曲三巻に幕がおろされる。ここにその栄光の言葉を記した「神曲」最後の部分を掲げよう。


 あゝ永遠の光よ、己が中にのみいまし、己のみ己を知り、しかして己に知られ己を知りつゝ、愛し微笑ほゝゑみ給ふ者よ 
 反映す光のごとく汝の生むとみえし輪は、わが目しばしこれをまもりゐたるとき 
 同じ色にて、その内に、人の像を描き出しゝさまなりければ、わが視る力をわれすべてこれに注げり 
 あたかも力を盡して圓を量らんとつとめつゝなほ己が要むる原理に思ひいたらざる幾何學者きかがくしやの如く 
 我はかの異象を見、かの像のいかにして圓と合へるや、いかにしてかしこにその處を得しやを知らんとせしかど 
 わが翼これにふさはしからざりしに、この時一の光わが心を射てその願ひを滿たしき 
 さてわが高き想像はこゝにいたりて力を缺きたり、されどわが願ひと思ひとは宛然一樣に動く輪の如く、はや愛にめぐらさる 
 日やそのほかのすべての星を動かす愛に(天堂編第三十三曲から、山川丙三郎訳)








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