ロシアのサイバー攻撃は世界をどう変えるか

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ロシア政府がアメリカの大統領選にかんして所謂サーバー攻撃を仕掛けたことで、選挙結果に重大な影響が生じたと判断したオバマが、ロシア大使館員らを国外追放するなど、報復制裁措置をとった。これに対してプーチンのほうは、いまのところは鷹揚に構えている。大統領がトランプに変れば状況も自ずから変わるはずだから、なにも慌てることはないと判断しているようだ。

今回のサイバー攻撃問題は、ロシア側は否定しているが、アメリカを始め西側諸国は深刻に受け止めているようだ。なにしろ自分の国の政治の行方が、外国によって左右されるとあっては、国家主権も何もあったものではない。特にアメリカの場合には、大統領選挙は、政権の正統性の唯一の根拠と言ってよいものだ。それが外国勢力によってゆがめられたとあっては、アメリカという国の政権の正統性が揺らぐだけではない。アメリカがこれまで採用してきた民主主義的ルールそのものが、危殆に瀕しかねない。

プーチンが、民主主義を尊重していないのは周知のことだ。そのうえ彼は西側諸国が一体となってロシアを抑圧していることに我慢がならないようだ。だから、アメリカのような国については、政治の正統性の根拠となっている民主主義を空洞化させ、また西側諸国については、それが一体性をもってまとまるのではなく、互いに反目しあって分断されることを望んでいるに違いない。

プーチンはアメリカ大統領選に介入しただけではなく、イタリアのレファレンダムを始めヨーロッパ諸国にもサイバー攻撃をかけた疑いがもたれている。来年はドイツとフランスで重大な選挙が行われるのを始め、ヨーロッパ諸国で選挙が行われる。そうした選挙にプーチンが介入する可能性は非常に高いと、オバマも西側の指導者も感じているようである。かりにフランスでル・ペンが大統領になるようなことがあれば、EUは崩壊するだろうと懸念されている。それをプーチンは望んでいるから、多少の政治的リスクを冒しても、サイバー攻撃を仕掛ける可能性は高い。

ところで、プーチンに結果的に助けられたかたちのトランプは、プーチン陰謀説はナンセンスだと言っているようだが、トランプとしてはそういう以外に言いようがないだろう。プーチンの仕業を認めれば、自分自身につばをかけるようなことになるからだ。問題は、トランプが大統領に就任したあと、プーチンに対してどのような姿勢をとるかということだ。かりに融和的な姿勢を取れば、プーチンを頭に乗らせ、西側諸国へのサイバー攻撃に拍車をかけるような結果になるだろう。トランプは、西側の結束が乱れることには、大した問題意識は持っていないようだが、しかしあまりプーチンを贔屓にすると、アメリカ国内はもとより、EU諸国からも強い反発をうける可能性がある。もっともその前に、プーチンの思惑通り、西側諸国の政権がナショナリストたちによって占拠されてしまえば、事情はおのずから違ってくるであろうが。





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