四季山水図(冬):雪舟の水墨画

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四季山水図四幅のうちの冬図。峨々たる岩山を背景に山里の寒々とした風景を描いている。背景の岩山も左手前景の岩山も雪をかぶって白くなり、山里の家々も雪に埋もれて沈黙の風情をかもし出している。四季山水図四幅のなかでは、もっとも日本的な雰囲気を感じさせる。

冬とあって、空気の透明感を強調するように、霧や霞で画面がぼやけて見えることはなく、風物はみな非常にシャープな輪郭を見せている。

ほかの三幅と比べると遠近感に深さがあるが、それは画面やや右手中ほどの一点を中心にして、ほかの部分がそこに修練してゆくような描き方をしていているせいだ。西洋画のような厳密な遠近法ではないが、一応消失点に向かって視線が集約されている。雪舟は画面に奥行きを持たせようとして、このような試みをしたのだろう。

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これは上部を拡大したもの。右手下の楊の木のあたりを中心にして、手前にある風景の各部分が折り重なるように配置されている。こうした奥行きの表現は、後年の雪舟に特徴的な要素となるものだ。







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