プーチン、トランプ、ル・ペンの三角同盟は成るか

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今年行なわれるフランス大統領選で、極右政党国民戦線(FN)の党首マリーヌ・ル・ペンが勝つ公算が強まっている。もしそうなった場合には、強烈なナショナリストを標榜する指導者がヨーロッパの大国に現れるわけで、EUはおそらく解体するだろうと予想される。そればかりでない、欧米における政治地図が一変するような事態が起こる可能性もある。

トランプがプーチンを高く評価しているのはよく知られている。いまのところ、昨年の大統領選挙へのプーチンの介入が確実視されるようになって、さすがにプーチンに肩入れする姿勢を控えているが、大統領職についた途端にプーチンとの融和を追求する可能性が強い。もしそんなことをしたら、トランプはロシアのスパイだなどと言われることになるが、トランプはそんな批判には耳を貸さないだろう。トランプは民主主義だとか、基本的人権だとか、そんなお題目は寝言程度に思っているから、多少胡散臭い相手でも、うまいビジネスができると判断すれば、手を結ぶに違いない。

一方、ル・ペンのほうは、EU内で選挙資金が確保出来ないため、ロシアの銀行から借りている事実がある。それがプーチンの了解を得て行なわれているのは、ほぼ間違いない。プーチンとしては、ル・ペンをフランスの大統領にできれば、ヨーロッパとの間で、これまでとは違った融和的な関係を築く足掛かりができる。トランプのアメリカに続いてル・ペンのフランスとも融和的な関係を結べれば、世界政治におけるロシアの位置を比類なく高めることができる。

プーチンも、トランプも、ル・ペンも、揃ってナショナリストと言ってよい。ナショナリスト同士は本来仲良くできないのが宿命だ。というより、互いに自国の利益をむき出しにして反発しあうものである。だから、ナショナリスト同士が手を結ぶには、それだけの名分がなければならぬ。この三者の場合、彼らを結びつける名分は反イスラムだ。トランプとル・ペンの反イスラム主義は今の時点で明らかになっているが、プーチンの場合には、アサド政権への肩入れに見られるように、かならずしも反イスラム一辺倒でもない。だが、トランプとル・ペンとの間で、反イスラムを手掛かりにして手を結ぶ強いチャンスがあるとみれば、おそらく反イスラムに転換するのは難しい選択ではないだろう。

かつての中世ヨーロッパ社会にも、反イスラムを共通の旗印として十字軍を形成した歴史がある。それと同じことが21世紀の欧米社会に生まれる可能性は十分にある。もしそれが実現した場合には、トランプのアメリカ、ル・ペンのフランス、プーチンのロシアが鉄の三角同盟を結び、対イスラム十字軍を結成することになる可能性が高い。世界はこの三角同盟を中核にしたアーリア連合と、イスラム社会の対立といった様相を呈するだろう。その狭間でアジアはどのような役割を果たすことになるのか。

日本についていえば、安倍政権の日本はアメリカの属国としての自覚を一層強くし、プーチンのロシアにも色目を使っている状態にあって、これからもアメリカの妾としてつつましく振る舞う限り、この鉄の三角同盟の使い走りとして認めてもらえるかもしれない。

(参考)Why France's Marine Le Pen Is Doubling Down on Russia Support By Vivienne Walt : TIME





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