雪舟の倣夏珪山水図

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(夏景山水図<倣夏珪>)

雪舟は在明中に中国画に学ぶ一方、著名な画家の絵を求め、それを携えて日本に戻った。そしてそれらの絵を模倣しながら、自分の画風の確立に努力した。雪舟が模倣した画家は何人かあるが、中でも夏珪は最も強い影響を雪舟に及ぼした画家であった。南宋時代の画院画家で、南宋院体の代表的な作家と目されている。日本にも「雨景山水図」などが今に伝わっている。

雪舟は、この夏珪の絵を二点模倣したものを残している。「夏景山水図」及び「冬景山水図」である。いづれも団扇様の画面に夏珪原作の山水図を描き、団扇の外側に夏珪の落款を模倣したものを加えている。

夏景山水図は、夏の山中の様子を描いたもので、突兀たる岩の麓に道を描き、そこを、子を伴った人物が歩いているというもので、中国人の好きな構図である。なお、夏珪は浙江省銭塘地方の出身で、この地方の江山を好んで描いたということだ。(紙本淡彩 30.2×30.7cm)

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(冬景山水図<倣夏珪>)

冬景山水図は、中ほどに雪をかぶったような白い岩肌を縦に長く描き、左手前にゴツゴツした岩の塊を、そのはるか彼方に楼閣のようなものを配している。絵の重心が左に偏っているのが、一目でわかり、いかにもバランスを失しているように見えるのは、原画がそうだったためか、あるいは雪舟の筆運びがぶれたのか。

この絵は、後の「秋冬山水図」に、構図の点でも雰囲気の点でもよく似ており、雪舟の画風の発展を考えるさいの手がかりを与えてくれる。(紙本淡彩 30.2×30.7cm)






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