(山水図巻秋)
山水図巻の画面は、季節ごとに均等に割り振られているわけではない。秋と冬はあわせて全体の四分の一程度である。これは夏珪の原作がそうだからか、あるいは雪舟の独自の配分なのか。日本人が秋がすきなのは雪舟の時代も変らぬと思うので、おそらく原作の構成に左右されたのではないか。
秋の光景もまた中国風である。岩山のなかに東屋があり、そこに二人の人物が安らいでいる。いかにも中国的な仙人のイメージだ。やわらかい線で、景物を明確に描いているところは、夏珪の技法の応用だろう。
続いて、野分が吹き荒れる秋の野原を描く。こうした光景には、日本的な情緒を感じ取れる。
(山水図巻冬)
冬は一面氷に閉ざされた湖の背景に、荒涼とした雪山の連なりを描く。日本の山のように峻厳ではない。これも中国の風景のイメージに近いのだろう。
画面の最尾は、荒涼とした冬山のイメージだ。「雪舟」の方印が押されている。
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