倣李唐牧牛図:雪舟

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李唐は、北宋末から南宋はじめにかけて活躍した画院画家で、南宋画の先駆者の一人として位置づけられる。雪舟は、夏珪らとならんで、李唐の画風も吸収しようとして、ここにあるような模写を行った。

これは、水牛をあやつる農夫を描いたもの。筆致の特徴は南宋風と指摘できる。李唐の絵はこのほか、台湾の故宮博物館及び日本の高桐院にそれぞれ伝わっているが、台湾のものが北宋風であるのに対し、この絵は南宋風であり、高桐院のものがその中間だと言われている。

欄外に李唐と記して、これが李唐の模写だと強調しているわけだが、原本が残っていないので、どれくらい正確な模写なのかはわからない。ただ、背景の樹木の描き方や、淡彩の施し方などには雪舟独自の工夫も見られる。

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これも倣李唐牧牛図の一点で、水中で水牛をあやつる農夫を描いている。前景の農夫及び童子が乗った水牛に比較して、背景の草むらが異様に大きく描かれている。この叢の描き方は、雪舟の工夫によるものらしい。

(両図ともに紙本淡彩 33.5×31.4cm)






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