円安誘導批判は「全くあたらない」か?

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トランプが日本を名指しで批判し、日本が為替操作を通じて円安誘導していると言ったことを受けて、安倍内閣の官房長官が早速、その指摘は「全くあたらない」と反論したほか、安倍晋三総理自身も、トランプの指摘は「あたらない」と逆批判した。その理屈は、日本の金融緩和政策は「物価安定目標のために設けられているもので、円安誘導を目的としたものではない」ということらしい。

これが屁理屈だということは、トランプがどんなに経済音痴だとしても、すぐ見破られてしまうだろう。金融緩和を、最近の日本のレベルまで徹底的に進めれば、円の価値が絶対的に下がって、その結果海外との関係で相対的に円安になるのは当たり前のことだ。その当たり前のことを、いやそれは物価安定策の副効果として現れたことで、日本がそもそも意図していたことではないなどと、誰も言える立場にはない。

普通なら、日本一国だけがそういう施策をとれば、海外から厳しい批判を浴びるところだが、いままで浴びないで済んできたのは、アメリカやEUも金融緩和政策を日本と同時に行ってきたせいだ。どの国も、景気を上向かせるための手立てとして金融緩和を行い、それが各国一斉だったために、日本の金融緩和による円安効果が大目に見てもらえたというに過ぎない。要するに、今までは、各国が横並びで通貨安政策を競っていたようなものだったわけである。

それがここへきて、アメリカが出口政策と称して、金利の上昇(正常化)に転じた。そうなれば当然、ドルは外貨に対して、これまでより割高になる。対円については、(日本がいままでのやり方を変えないかぎり)その割高効果に加速が加わるわけだ。だからトランプは、アメリカが金融政策を正常化させるのだから、日本もそれに倣って、過度な金融緩和をやめろと言っているのである。そうした言い分に対して、安倍政権のような対応をすると、トランプの怒りを煽ることになるだろう。まるで頭ごなしに、トランプの言い分を否定するような言い方だからだ。

「その指摘はあたらない」というのは、安倍内閣の専売特許のようなものになっており、官房長官などは、自分と異なった意見については、ことごとく「その指摘は当たらない」と言ってきたが、いままでそれで済んできたのは、相手の腕力が弱かったからだろう。とろこがトランプは、それではすまない。お前の指摘は当たらない、などと高飛車な言い方をしたら、それこそ横面を張られて、泣きっ面をさらすことになるだろう。





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