トランプとドゥテルテ

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先般、トランプとベルルスコーニの共通点を強調する意見を紹介したが、最近はトランプをフィリピンのドゥテルテに比較する議論もあるようだ。最近のJapan Times に載っていたフィリップ・バウリングの小文などもその一つだ。バウリングによれば、この二人は致命的なところで共通の間違いを犯している。それは同じく共通点と言っても、負の共通点というわけだ。

その最たるものは、両者とも本来の同盟者を軽視して、本来敵であるべきものを利しているということらしい。ドゥテルテの場合には、本来の同盟国であるアメリカを軽視して、中国を利している。利しているどころか、中国に擦り寄っている。一方トランプの場合には、本来の同盟国であるEU諸国や北米の隣国などを軽視して、ロシアのプーチンを持ち上げることで、ロシアを不当に利している、というわけである。

これはまあ、アメリカのエスタブリッシュメントのメンタリティを反映したものだと思われるところがあり、全面的に同意するいわれは無いのかもしれない。しかし、ドゥテルテとトランプの間には、ほかにも重要な共通点がある。それは民主主義的な理念に無頓着で、人権に対してシニカルなことだ。ドルテルテが自国民を相手に行っている殺人ゲームは、民主主義と立憲主義の理念を逸脱しているし、殺される側の権利に対して無頓着なのは、人間性の理念をあざ笑っているものだ。

トランプもまた、立憲主義とか民主主義といったものに無頓着なのは、三権分立というアメリカ的な理念を軽蔑して、大統領の独裁的な権力をあからさまに追及しているところに現れているし、テロ対策を理由に人権を軽視するところも、ドゥテルテとよく似ている。ドゥテルテが麻薬犯罪者対策を理由に罪も無い国民を殺しているのと同様、トランプもテロリストの排除を理由にして、これまでアメリカに対するテロとは無関係だった国々の人々を排除しようとしている。その一方で、9.11のテロリストを出したサウジアラビアとかアラブ首長国連邦といった国々は無罪放免だ。その理由がどうもふるっている。これらの国々はトランプのビジネスのパートナーであるのに、排除対象とした国々はまったく関係がなかった、というのである。

そんなわけでドゥテルテとトランプを比較するときには、外交関係からする敵・味方の議論よりも、民主主義とか立憲主義とのかかわりにおいて論じるほうが説得力があると思う。

(参考)Trump's international role model? Rodrigo Duterte By Philip Bowring





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