山水図屏風(左隻):雪舟

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雪舟としてはめずらしい六曲一双の図屏風形式の山水画である。一応伝雪舟という扱いになっていて、真筆とは断定されていないが、真筆の可能性は非常に高いとされる。落款に「備陽雪舟筆」とあることから、文明六年(1474)頃の作品と思われる。この時期に雪舟は、山水小巻を描いており、筆致に共通するものがあると指摘される。両者とも、行体画だということで、全体としてやわらかい印象が特徴である。

構図的には、やや左手遠景に主山を配し、近景との間に雲煙を置くことで遠近感を演出しているところは、初期の四季山水図と同じだが、遠景と近景とは截然と区分されておらず、また左手遠方に海らしいものを描くことで、画面が複雑になっている。複雑であるばかりか、左側と右側との連続性も見られず、構図としては破綻しているかの印象も与える。これは雪舟の若描きのせいだとする見かたもある。

近景についていえば、山路をくねらせることで、視線を奥のほうへと誘導する効果をねらっており、この部分だけで奥行きを感じさせる。そして奥に導かれた視線はいったん雲煙の中に解消され、その雲煙の上から主山が現れるという具合に、画面に動きを与えようとする雪舟の意図が伝わってくる。

それにしても、主山の麓がどこに続いているのか、よくわからない不思議な絵である。

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これは、左手の近景を拡大したもの。樹木の描き方に、行体画の柔らかさを感じ取れる。(紙本淡彩 161.5×352・3cm ワシントン・フリア美術館)






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