秋景山水図:雪舟

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「秋景山水図」及び「冬景山水図」は、もともと四季山水図四点のうちの二点だったと考えられる。この二点は、「山水長巻」と並んで雪舟の最高傑作というに相応しい作品だ。画法的には、若年時の技法や中国からの影響を脱して、雪舟独自の境地を切り開いた記念碑的な作品と言える。

この絵の最大の特徴は、雪舟独自の奥行き表現だ。岩山や丘の間を、山道をS字型に配し、その視線の先に楼閣を置くことで、観客の目は奥のほうへと誘導される。しかも単純に誘導するだけではなく、途中に二人の人物を配することで、視線を一旦そこでとめ、更に続いて奥へと誘導するといった、手の込んだ工夫がされている。

これ以前の絵では、奥行きは霞を介在させることで表現されていたが、この絵ではそういう余計な要素を加えずに、すなおに視線を奥へと誘導できている。日本の絵画史上に新しい機軸をもたらしたといってよい。

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これは、山路の途中を拡大したもの。二人の人物のところでいったん止った視線は、そこを起点にして更にその奥へと導かれる。人物と楼閣とのサイズの割合が、その奥行きを丁度よい具合に表現できている。(紙本墨画 46.3×29.3cm 東京国立博物館)






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