限定核戦争はありうるか

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米国防総省の付属機関がアメリカの核政策についての提言を行ったそうだ。その柱は二つ、一つは新たな核兵器の開発を目的に核実験を再開すること、もう一つは小型核兵器を用いて敵の戦争能力を破壊するために限定的な核攻撃(限定核戦争)の可能性を追求することだ。

これについては、当然批判すべき点がある。前者はアメリカ以外の国による核実験を許容することになり、ひいては世界的な核拡散の可能性につながるということ。後者については、限定核戦争のつもりで始めたものが、全面的な核戦争に発展する恐れがあるということだ。

一体限定核戦争というものがありうるのか。国防総省のこの報告がどのような事態を想定して限定核戦争の可能性を示唆しているのか、明らかではないが、常識として考えられるのは、トランプ政権による北朝鮮への核攻撃だろう。北朝鮮の核兵器開発については、トランプは深刻な懸念を表明している。だから、北朝鮮の核攻撃能力がアメリカ本土を十分標的にできるレベルまで達しないうちに、先制攻撃をして無力化しておきたいと考えているのかもしれない。その場合に、先制攻撃を完全なものにするために、核兵器を使うという選択は十分にありうる。

また、トランプ政権は、イランの核兵器開発にも大いに危機感を覚えているようだから、イランの核兵器能力を標的にした先制核攻撃を選択する可能性もないわけではないだろう。

アメリカという国は、基本的には他国のことを考慮にいれず、自分の都合だけで動く傾向が強い。その自分にとっての危険が受容の限度を超え、脅威となっている国への先制核攻撃が、とりあえず自分自身に跳ね返ってこないと判断すれば、先制核攻撃も辞さないかもしれない。

北朝鮮への先制核攻撃についていえば、北朝鮮がアメリカの先制攻撃に対して反撃しても、アメリカ本土までは及ばないだろう。せいぜい韓国や日本への攻撃に留まるに違いない。韓国や日本が北朝鮮に攻撃されても、アメリカとしてはそんなに痛痒に感ぜずにすむ。同盟国の恨みを買っても、アメリカの安全が確保できるなら、そうした攻撃を選択すべきだ。こうトランプ政権が判断する可能性は十分にある。

これはアメリカの同盟国である日本にとっては、他人事では済まない。アメリカにとっては限定核戦争にとどまっても、日本はそれで済まないからだ。限定核戦争といえども、核戦争は核戦争だ。限定が外れて全面戦争にならないという保証もない。そうなった場合、日本の安全など吹っ飛んでしまう。

日本としては、トランプがメチャクチャな行動に走らないよう、しっかり見定めておくことが肝要だ。かりにもトランプの行動にずるずると引きずられてはならない。






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