トランプの泥仕合戦術

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トランプがツイッター上で、例の調子でオバマを罵った。大統領選挙期間中に、トランプタワーにある自分のオフィスに盗聴器を仕掛けるよう命令したというのだ。だがその根拠は何も示していない。極右プロパガンダメディア、ブライトバートの記事が唯一の根拠らしい。トランプ自身も信じているかわからないこんなガセネタを使って、何故こんな攻撃を仕掛けたのか。

大統領による盗聴事件と言えば、ニクソンのウォーターゲート事件が思い出される。トランプも、それと同様のスキャンダルにオバマを巻き込むことで、オバマ政権を貶め、それと反比例して自分の権威を高めたいというのだろうか。

常識から考えれば、何らの根拠もないトランプの攻撃は全くナンセンスである。ひとつだけ意味があるとすれば、根拠のない情報でも、相手との間で泥仕合に持ち込む材料に使ったり、あるいは現在自分が直面している危機に関して、世間の注意をそらしたりする効果があるということだろう。トランプが、現在自分に向けられているロシア・スキャンダルの疑いから、国民の関心をそらすことを目的として、こんな泥仕合を仕掛けたとすれば、それなりに納得できる。

しかし、トランプはかりにもアメリカの大統領だ。ならず者の親分がやるならまだしも、アメリカの大統領ともあろうものが、全くのウソ偽りを持ち出して来て、相手を不当に攻撃するというのは、余りにも異様な眺めだ。しかもトランプが攻撃している相手は、つい先日までアメリカ大統領だった人だ。その大統領だった人を、今の大統領が、何らの根拠もなく口ぎたなく罵る。これは政争以前の、利己心だけに基づいた醜い思惑と言わねばならない。

トランプがこんなことをするについて、筆者は別に驚いてはいない。トランプ政権の発足に当って、この政権のメンバーを一昔前の西部劇に出て来たならず者一家を連想させると言い、トランプのことはごろつきと言ってよいと書いたくらいだから、そのごろつきがこれくらいのことを働くのを見るのは、筆者としては驚くほどのことではない。

しかしアメリカ国民としては、そうも言っていられないだろう。なにしろ日頃平気でうそをつくばかりか、そのうそを前大統領に向けてぶつけ、アメリカの威信を傷つけるばかりか、ロシアとの間の妖しい関係について、世間の目をそらそうとしているような人間を、いつまでも大統領の椅子に座らせておくことは、アメリカの恥というべきだ。アメリカ国民は、そんな恥をいつまでも見過ごしていられるような馬鹿者ばかりではあるまい。






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