山水図巻の秋の部分は、西湖を上から俯瞰した景色に始まり、湖の沿岸から奥の山の中へと視線を導いてゆく、流れるような手法で描かれている。しかもそれを単に横へ連続させるだけではなく、季節の移り変わりがそれとなく感じられるようになっている。雪舟の構図に対する綿密な意図が現われているところである。
上は、初秋の景色。湖の水はうす青く彩色され、遠景の岸辺は近景の樹木とやや曖昧な対比をなしている。伝雪舟瀟湘八景図に平沙落雁を描いたものがあるが、そこから雁を取り除くとこの図柄と同じような構図になる。雪舟は、ポイントポイントで、瀟湘八景図をこの図巻に取り込んでいるようである。
仲秋の景色。湖の岸辺の人里を描く。遠景には、湖からすぐに立ち上がった丘が描かれる。
晩秋の景色。右端には、小橋をわたる人々が、左端には、山中の賑やかな市の様子が描かれる。
これは、山中での収穫後の市を描いたところを拡大したもの。夥しい数の人が、市に集まっているところが描かれている。こんなにも多くの人を配した図柄は、雪舟の作品でも珍しいのではないか。
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