犬の生活(A Dog's Life):チャップリン

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チャップリンの1918年の映画「犬の生活(A Dog's Life)」は、ルンペンプロレタリアートの惨めだが自由気ままな暮らしぶりを描いたものである。一人の宿無しが、野良犬のような暮らしをしているうち、一匹の野良犬と仲がよくなり、その犬とともに人生を切り開いてゆくという話である。短編映画にしては、四十分という長さであり、一応物語としてのまとまりは持っている。チャップリンにとっては、従来のスティックスラップ・コメディから本格的な劇映画への足がかりとなった作品だ。

映画の前半は、チャップリン演じる宿無しの暮らしぶりを主に描く。警察に誰何されたり、屋台の売り物を盗んで食ったり、ダンスホールに紛れ込んだりといった、宿無しならではの奇想天外な行動が描かれる。宿無しであるから、文字通り寝るところもない。通りの一角に寝転んでその日暮らしをしている。野良犬の生き方とまったく異なるところはない。1918年といえば、第一次世界大戦が終わったばかりであり、アメリカの景気はそんなに悪くなかったと思うのだが、この映画の中のルンペンたちは、職にありつくのに必死である。要領の悪いチャップリンは、なかなか仕事がもらえないので、いつまでも宿無しから抜け出せない。そんな宿無しのチャップリンと、これまた宿なしの犬つまり野良犬が仲良くなる。

後半は、野良犬を連れたチャップリンがダンスホールに紛れ込み、そこで一騒ぎ起こした後で、ダンスホールの踊子と仲良くなる過程が描かれる。その挙句にチャップリンは、農村地帯に畑を買って、そこで踊り子の女性と新しい生活を始めるのだ。そして彼等の間に子どもが生まれるよりも一足早く、野良犬に子犬が生まれる。その子犬を囲んだチャップリンと踊子と元野良犬の幸せそうな表情を映し出して映画は終わるというわけである。

見所はやはり、警察やギャングの追跡からチャップリンがさまざまな智恵を使って遁れるところだろう。ギャングが地面に埋めた財布を野良犬が掘り出したおかげで、それをめぐってギャングがチャップリンに襲いかかる。しかしチャップリンは、彼らを迎え撃って、一度は取られた財布を取り戻したばかりか、彼らや警察を散々に翻弄する。そこが見ていて気持ちがよい。権力や強欲漢に対するチャップリンの反感がよく現れているからだ。

二人のギャングを反目させるために、チャップリンがそのうちの一人に成りすますところが面白い。その男を気絶させた後に、その男の背後にまわり、自分の手を男の手と見せかけて、色々ないたずらをしかけるのだ。これはチャップリン流二人羽織ともいうべきだろう。どこからこんなアイデアを思いついたのか。






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