「無為(Eiaha Ohipa)」と題するこの絵は、小屋の中で寛ぐ二人のタヒチ人を描いている。二人とも床の上に座り、男のほうは脚を投げ出して楽な姿勢をとりながらタバコを吸い、女は男の背後にかしこまっている。男の方を明るく、女をやや暗く描くことで、男の方を強調する意図を示している。
明るい屋外には、一人の男が立っているが、これはゴーギャン自身の自画像だと思われる。逆光のなかから一匹の犬の影が浮かび上がっているが、画面の一隅に犬を描き加えるのは、ゴーギャンのかわらぬ趣味だった。
この絵には、犬のほかに猫も描かれており、男の膝元で丸くなっている。男の怠惰が猫にも乗り移ったように見える。
これは、人物の表情の部分を拡大したもの。男が髪飾りをつけ、耳にイアリングをしている。タヒチの人間は一見すると男と女の区別が付けにくいとゴーギャンは「ノアノア」のなかで書いていたが、この絵のなかの男もそうした一人なのだろう。(1896年 カンヴァスに油彩 65×75cm モスクワ プーシュキン美術館)
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