「ネヴァーモア(Nevermore)」とは、エドガー・ポーの詩「大鴉」のなかで、なんども繰り返されるリフレインだ。この絵にゴーギャンが何故こんな題名をつけたのかよくわからない。モデルは、当時の愛人バフラだと思われるが、彼女はゴーギャンの子を失ったばかりだったので、そんなことはもう御免だ、という気持をこめたのだろうか。
構図は、西洋の裸体画の伝統を踏まえている。ゴーギャンはこの絵によって、アングルのグランド・オダリスクやマネのアランピアと比肩される業績を残したといってよい。
背後の壁に鴉のような形をした鳥が描かれているが、これはゴーギャンによれば、ポーのイメージするような「大鴉」ではなく、悪魔の使鳥ということだ。やはり自分の子を失った打撃が糸を引いているのかもしれない。
この絵をゴーギャンは気に入っていたようで、モンフレー宛の手紙の中で、「これはいい作品だと思う。ごく単純な裸体によって、現在では失われてしまった未開人のある種の豪華さのようなものを表現しようとした」(高階秀爾監修)と書いている。
これは、裸婦の上半身の部分を拡大したもの。肉体の豊満さを感じさせるが、そこがゴーギャンのいうところの「ある種の豪華さ」なのだろうか。(1897年 カンヴァスに油彩 59.5×116cm ロンドン コートルード・インスティチュート)
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