
雪舟の動物画としては、猿猴図屏風が伝わっている。これは、鷲鳥図屏風とともに六曲一双をなすもののうち左隻である。両隻とも「備陽雪舟七十二夏作之」という落款がある。その真偽については確たる結論は出ていない。
右隻の図柄が鷲を中心にして躍動感を感じさせるのに対して、左隻のこの図柄は静的なイメージだと言われるが、こちらもそれなりに動的な感じは伝わってくる。
巨木の幹や枝にぶら下がったりとまったりしている猿の群像を描いているが、雪舟はこれを牧谿に倣ったと指摘されている。牧谿は宋末・元初に活躍した画家で、日本にも伝わっているが、それを見ると行体の柔らかな筆致の絵である。雪舟のこの猿の描写にも、そうした雰囲気が出ている。

これは、猿の一部を拡大したもの。顔つきやら手足の描き方には、強いデフォルメが働いている。(紙本墨画 161.3×390.5cm 六曲一双 ボストン美術館)
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