トランプがバノンを遠ざけ始めたワケ

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トランプが最側近のバノンを国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーからはずしたことで、さまざまな憶測を呼んでいる。トランプの娘婿クシュナーとバノンの対立をトランプが喜ばなかったとか、NSCの議長マクマスターが異端のバノンの追い落としにかかったとか、いうものである。最大の理由はやはり、トランプがバノンに政治的な意味でのまずさを感じ始めたからではないか。

トランプが早速始めたムスリム圏からの入国規制だとか、オバマケアのリピールを主導したのはバノンだといわれるが、それらがことごとく頓挫し、トランプは政治的な傷を蒙った。今回のシリア爆撃についても、バノンはアメリカ・ファーストの立場から反対を唱えた。こうしたバノンのやり方をそのまま鵜呑みにしていたら、自分の政治的立場がどんどん悪くなる、ということにトランプが気づき始めたのではないか。

バノンの主張はもともと、トランプが選挙戦を通じて訴えてきたことだ。だからいまさらそれを撤回するのは、トランプのバノンに対する裏切りだろう。だからといって、バノンのいうことを鵜呑みにしていたら、アメリカの世論からどんどん逸脱していってしまう、そういう危機感をトランプなりに感じて、バノンを遠ざけ始めたのだろう。遠ざけ始めたというのは、まだ完全にバノンを見放していないからだ。バノンはまだ、NSCのメンバーであるし、トランプに対して政治的影響力を完全に失ったわけではない。

こうした政治的な思惑とはまた違ったレベルで、バノンは立場を弱くしている。クシュナーとの関係だ。クシュナーはユダヤ人であり、イスラエルやアメリカ国内のユダヤ人コミュニティの利害を代表しているようなところがある。一方バノンのほうは反ユダヤ主義者である。この二人は水と油なわけだから、仲良く共存することはありえない。どちらか一方が倒れるまで、抗争を続けるに違いない。いままで破綻せずにもっていたことが不思議なくらいだ。

この二人の対立を前にして、トランプはクシュナーのほうへ大きく傾いてきているようだ。やはり娘婿のほうが可愛いというわけであろう。

こんな具合で、今回の事態の背後には、なかなか人間的な事情が働いているようである。







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