フランスにおける不都合な真実

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どの国にも一つや二つ不都合な真実というべきものがある。フランスの場合、その最たるものは"Vel d'Hiv"だろう。これは第二次大戦中にフランスで起きたユダヤ人狩りの中でもっとも大規模なものだ。1942年の7月に、パリにある屋内競技場に13000人のユダヤ人が集められ、ナチスの強制収容所に送られた。そのほとんどは殺された。その内訳は、女性が約5900人、子どもが約4100人、男性が約3100人だった。

この件を始め、ナチス占領中にフランス国内で駆り集められナチスの強制収容所に送られたユダヤ人の数は、76000人に上る。これはフランス人自身にとっても良心の呵責になるもので、ルイ・マルの映画(リュシアンの青春)などを通じて、その良心の呵責の念を表明したものだった。

ところが近年になって、フランスのユダヤ人狩りを矮小化するような動きが目立ってきたらしい。フロン・ナショナルの創始者でマリーヌ・ル・ペンの父親であるジャン=マリー・ル・ペンは、"Vel d'Hiv"を些細なことだったと放言し、娘のほうも、これはナチスとそれに協力した一部のフランス人がやったことで、フランス人全体が責任を負うようなことではない、と主張している。こう言うことで彼女は、第二次大戦中のフランスおけるユダヤ人迫害を、歴史の表面から消し去ろうとしているようである。

これは、不都合な真実を歴史から除去しようとする動きだが、そしてそうした動きは、フランスに限らず色々な国で認めることができるのであるが、中には不都合な真実をそもそも認めない国もある。たとえばアメリカだ。アメリカが第二次大戦中に日本の数十万の市民を、空襲や原爆投下を通じて虐殺したことは歴然とした事実である。ところがアメリカはいまだに、こうした行為を悪いことだったとは認めていない。それどころか、アメリカ人の兵士の命を救うために、必要で、かつ正義にかなった行為だったと開き直っている。アメリカ人の兵士の命を消耗させないという目的が、敵国とはいえ、数十万の一般市民を虐殺することを合理化しているわけだ。だから、アメリカ人にとっては、不都合な真実は存在しないということになる。

同じようなことは、第二次大戦中に迫害の対象となった当のユダヤ人についても起きている。ユダヤ人は大戦後パレスティナに押しかけてきて、武力を背景に原住民を追い出し、彼らの土地を奪ってきた。これはアメリカがやったことを真似したと言える。アメリカも、ヨーロッパから押しかけてきた連中が、インディアンと称される原住民から土地を取り上げ、逆らう者を殺し尽くしながら、自分らの都合の良いように国づくりをしてきた。イスラエルのユダヤ人はそれと全く同じことをやってきたわけである。

しかも、最近のユダヤ人によるパレスティナ人の迫害は、非常に非人道的な様相を呈している。彼らは追い立てられて行き場を失ったパレスティナ人の多くをガザ地域の狭い土地に閉じ込め、ことあるごとに攻撃を加えては、何千というパレスティナ人たちを殺している。ユダヤ人からすれば、それはテロリストから身を守るための自衛行為だということになるが、かつてのアメリカの白人たちも、抵抗するインディアンを悪魔の手先だとして殺してきたのである。

最近のユダヤ人のなかには、ガザ地域のパレスティナ人を殲滅させるために、原爆を落とすべきだという議論もあるようだ。これは、ユダヤ人の命を守るためには、何でも許されるという理屈であって、その点では、アメリカ兵士の命を守るためには空襲や原爆投下も許されるとした、かつてのアメリカの理屈と全く同じである。

フランスにかかわることがらが、途中からそれて、アメリカやイスラエルのユダヤ人の無法ぶりに映ってしまったが、ことほど左様に、最近の世界はきな臭さを増してきつつあるということか。





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