桜の花が散るのを見届けて鴨は去った

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先日、筆者の家の近所にある長津川調整池公園に桜が咲いた光景を紹介したが、その桜が昨日来の嵐ですっかり散り果てた。それと共に、昨日まで見られた鴨が一羽残らず見えなくなった。おそらく北の方へ去って行ったのだと思う。桜の花が散るのを見届けて。

この調整池公園には毎年、秋の深まるのを待って鴨の群が渡って来て、春の訪れとともに北のほうへ帰って行く。総数にして三十羽に満たない小さな群であるが、毎年忘れずに、けなげに渡ってくるのが殊勝だ。群の半分は調整池の水溜りに陣取り、残りの半分は長津川の本流、調整池よりもやや上流に陣取る。相互に交流があるかどうかはわからない。

まわりに天敵がいないので、鴨はいつものんびりと泳いでいる。時たま水のなかに首を突っ込んでいるのは、小魚でもとっているのだろう。必ず二羽セットで行動している。一羽しか見えない時でも、注意深く観察していると必ず近くに片割れがいる。鴨は、ペンギンに劣らず夫婦仲が好いと見える。大柄で色の賑やかなのが雄、小柄で地味な色合いのが雌だ。筆者の注意不足かもしれぬが、夫婦が子を連れているのを見たことがない。子は北の国の春に産み育てるのだろうか。

今年は、桜の花の咲くのが遅かったので、鴨もそれだけ長く滞在していた。その鴨が少しずつ数を減らし、昨日には六羽ほどになっていたのが、今日になって全く姿を消した。全員一斉に去って行ったのではなく、少しずつ波状的に渡っていったらしい。

毎日の散歩には必ず長津川の調整池周辺を歩き、その際には鴨を見るのが楽しみだった。その鴨がいなくなって、心のどこかに穴があいたような気分になる。人間、普段見慣れたものが突然見えなくなることには、馴れていないようにできているのだろう。





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