天橋立図:雪舟

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「天橋立図」は、雪舟八十二歳以降の最晩年の作品と考えられる。技法的にも、品格の上でも、雪舟の画業の集大成といえるもので、彼の最高傑作の一つに数えてよい。

構図としては、宮津湾の東岸から、西の方向を俯瞰したものだ。天橋立を右側に描き、左側には知恩寺を、背後には成合山を描く。ほぼ実景と一致しているので、雪舟は実際に現地に赴いて、この図柄をスケッチしたのだと考えられる。そうだとすれば、八十歳を超えた雪舟の、絵に対する執念を感じさせるものだ。

画面は手前に宮津湾の東岸を、中央部に天橋立の砂洲とその先に延びる知恩寺を、そして上部に成合山とその麓に広がる街並をといった具合に、三段に仕切られ、横への広がりを感じさせる一方、山々を通じて縦の線を強調することで、画面を引き締めている。

画面の所々に書付があり、それを相互に照らし合わせることで、執筆時期の推定をするヒントが得られる。そのヒントを手がかりにして、これが雪舟八十二歳の最晩年の作だと推定されるわけである。

雪舟はこの絵を、いろいろ世話になった知恩寺のために描いたとされるが、その知恩寺についての書き入れはない。

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これは、天橋立の砂洲とその背後の龍神社の部分を拡大したもの。今日股のぞきで知られる展望台は、龍神社の奥の高台にある。そこからは、天橋立の砂洲が、縦に見える。この図のように、横から見られるポイントは、現在はないようである。(紙本淡彩 89.3×169.0cm 京都国立博物館)






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