王族の女(Te arii vahine):ゴーギャン、タヒチの夢

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「王族の女(Te arii vahine)」と題したこの絵のモデルが本物の王族の女なのかどうか、ゴーギャンははっきりとは言っていないようだ。「とても知的で、素朴な英知をもったタヒチのイブである」と手紙の中で書いているところから、そういう知性が王族の女といわれるに相応しいと考えたようだ。

草原に横たわった裸婦のポーズは、クラナッハの「泉のニンフ」を念頭においていると思われる。また、横たわった裸婦が陰部を手で隠しているところはマネの「オランピア」を手本にしているのだろう。この作品が出来上がったとき、ゴーギャンは「これまでで最高の傑作」と書いているから、よほど自信があったのだと思われる。

泉のニンフやオランピアが観客の方へ視線を向けているのに対して、この女性の視線は別の方へ向いている。わたしは、あなたたちの愛玩物じゃないのよ、と主張しているかのようだ。

背後の木の幹に蛇がまきついているのは、この絵の女性がイブであることを物語っている。その木の陰に、胴長の犬を配しているのは、犬へのゴーギャンのこだわりである。(1896年 カンヴァスに油彩 97×130cm モスクワ プーシュキン美術館)

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これは、「王族の女」の習作として描かれた水彩画。日本では「マンゴーの女」として知られてきた。構図は油彩画とほぼ同じである。(1896年 水彩画 17.2×22.9cm 個人蔵)






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