半身達磨(二):白隠の禅画

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これは紀州の串本無量寺に伝わる達磨像。無量寺は東福寺派の禅寺で、長沢芦雪や丸山応挙の作品を多く収蔵しているが、白隠の作もいくつか持っている。これはその一つだ。何時頃の作品か、詳しいことはわからないが、白隠が達磨像を多く手がけるようになった晩年つまり七十歳代の作品だろうと推測される。

達磨の半身を大きく描き、その上部に賛を書き加えている。賛の内容は「直指人心、見性成仏」で、前回の彩色画の達磨像と同じだが、こちらは左手から右へ向かって文を書いている。このように、文を通常とは逆の方向に書き進めるのは、白隠の一つの特徴だ。

この達磨もやはり大きく目を見開き、目玉を上向きにしているところは前の作品と同じだ。この表情は白隠の他の多くの達磨像にも共通するものだ。この絵の場合には、顔の輪郭線が薄墨で描かれ、上瞼と目玉の部分だけが黒々と強調されているので、そこのインパクトが非常に強まっている。

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これは、顔の部分を拡大したもの。目玉のインパクトが強く迫ってくるような気がする。ところがこの目玉は、絵を見るもののほうではなく、あらぬ方角に向けられている。そしてその視線の先には、賛の法語があるように工夫されている。わしの顔ではなく、法語をよく読んで修行しなさい、と言っているかのようだ。

首の下のところを、太い隅の線で区切っているのは、白隠の半身達磨像における一つの特徴である。

(紙本墨画 89×35cm 和歌山・串本無量寺蔵)






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