団扇を持つ若い女:ゴーギャン、タヒチの夢

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ゴーギャンはヒヴォア島にやってくると早速、十五歳の女性マリー・ローズ・ヴァエオホを妻にして、子どもまで生ませたが、彼女をモデルに絵を描くことはなかった。ゴーギャンがモデルとして選んだのは、トホタウアという女性だった。彼女は医師兼呪術師の妻だったが、まだ若く、魅力的な赤毛をしていて、ゴーギャンの気をそそった。ゴーギャンはこの女性を妻には出来なかったが、モデルに採用することで、いささかの満足を得たようだ。

「団扇を持つ若い女」と呼ばれるこの絵は、そのトホタウアの肖像だ。面白いことにゴーギャンは、彼女の姿を一旦写真にとり、それをもとにこれを描いた。下にあるのがその写真だ。

写真では、彼女は上半身にも衣服をつけた姿に映っているが、ゴーギャンは胸をはだけた姿に描き変えた。しかしポーズにエロティックなところはなく、ヨーロッパの伝統を踏まえた大人しい感じの絵である。多くのゴーギャンの絵のモデルと異なり、この女性は視線をあらぬ方に向けている。写真では、撮影者つまりゴーギャンの方へ視線を向けているのに、それをわざわざこのように変えたのは、どういう意図からか。

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ともあれ、この絵の中の女性は、ポリネシアの女性という感じは強く受けない。肌の色も髪の毛も、ヨーロッパの女性のようである。その女性が、単純な色を背景にして、やや崩れた姿勢で椅子に座っている。(1902年 カンヴァスに油彩 92×73cm エッセン フォルクヴァング美術館)






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