蛤蜊観音:白隠の菩薩像

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蛤蜊観音は、中国の俗説から生まれたもので、仏教の経典にあるわけではない。その俗説というのは、唐の文宗皇帝がハマグリを食おうとして、蓋が開かないので、香を焚いて祈祷したところ、蓋があいて中から観音様が現れたというものだ。

ハマグリのような二枚貝のなかには、真珠の玉が入っているものがあるところから、その真珠を観音にたとえたという説もある。また、ハマグリは蜃気楼ともかかわりがあり、ハマグリが気を吐いて蜃気楼となりそれが観音様に見えたという説もある。

この絵は、いままさにハマグリの中から現れた観音様を描いたもの。はまぐりからは気が立ちこめ、その中から現れた観音は蜃気楼のように見えないこともない。はまぐりの周りには、大勢の人々が集まって、観音さまの誕生を祝っている。向かって右側には蝦のかざりものをつけた老男老女たち、左側には竜王とその一族が描かれている。

ボッティチェリのヴィーナスの誕生を思わせる一枚だ。

賛には「はまぐり身得度者、即現はまぐり身而為説法」とある。法華経普門品の一節をもじったものだ。

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これは上半身の部分を拡大したもの。頭頂には蓮の飾り物を戴いている。

(絹本彩色 129.0×57.0cm 永青文庫蔵)






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